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Channel: 超級龍熱
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「ブルース・リーの出てないブルース・リー映画」(7) J.S.リー主演 『ドラゴン/ブルース・リー物語』

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さて、“龍の年”特別企画第1弾として連載して来ました「ブルース・リーの出てないブルース・リー映画」も今回が大結局、つまり最終回となります。
実はこの「ブルース・リーの出てない〜」は当初の予定では全8回を予定していたのですが、あるアクシデント(後述します)のために第8回に予定していた作品を急遽本特集のフィナーレを飾る作品として取り上げたいと思います。
その作品こそがロブ・コーエン監督、ジェイソン・スコット・リー主演『ドラゴン/ブルース・リー物語』(93)です。
私がこのリーさんことブルース・リーの伝記映画の最高傑作と言われる作品の存在を初めて知ったのは、当時近所のレンタルビデオ店にあったブランドン・リー主演『ラピッド・ファイヤー』(92)の輸入版VHS(この当時はまだ国内版VHSと共に輸入版VHSや韓国製VHSのレンタルが許されていた何とも長閑な時代でした)の冒頭に入っていた『ドラゴン〜』の予告編を観た時でした。
「とうとうハリウッドでリーさんの伝記映画が作られたんだ!」、その胸躍るような予告編の映像を繰り返し観ながら、『ドラゴン〜』に対する私の期待と興奮は否応にも高まったのでした。
そして実際に『ドラゴン〜』が日本でロードショー公開された際に勇んで劇場に駆けつけた私の目の前に映し出された『ドラゴン〜』は、そのオープニングでスクリーンに浮き出た真っ赤な“龍”の字が、すぐに“DRAGON”へと変化する素晴らしいタイトルバックに始まり、主人公リーさん(ジェイソン・スコット・リー)のフレッシュな風貌と鍛え上げられた肉体、リーさんと父である李海泉(リック・ヤング)の親子愛、アメリカでのリーさんとリンダ・エメリー(ローレン・ホリー♪)の出会い、中国人社会が放った刺客ジョージ・サン(演じるは本作のアクション監督も兼任し、邵氏公司や協利公司で数々の秀作を残した張午郎!ついでに弟のルーク・サンを演じるはオン・スーホン)との“コロシアムの決闘”を彷彿させる激闘、そしてそのジョージ・サンの奇襲で背中を負傷し、長い闘病生活から立ち直ったリーさんとジョージ・サンが「第1回国際空手大会」のリング上(リングアナウンサー役はエド・パーカーJR、リング下には本作の截拳道顧問のジェリー・ポティートの姿も)で再度激突する“60秒限定デスマッチ”、息子ブランドンの誕生、『グリーン・ホーネット』出演(監督役でブリット・リードことヴァン・ウイリアムス)、ビル・クレーガー(ロバート・ワグナー)の裏切りによる『燃えよカンフー』出演の挫折(クレーガー主催のパーティで歌手役でシャノン・リーも出演)・・・といった実際のリーさんの人生に起こった様々な出来事が実にドラマチックに描かれていきます。
そして映画は中盤から終盤に差しかかり、この『ドラゴン〜』という作品の中で私たちリー信者が最も愛し、また最も感激に打ち震える事となった名シーンが登場する事となります。
それが1971年の10月に行われたリーさんの香港凱旋第1作となった『ドラゴン危機一発』(71)のプレミアのシーンで、劇中では映画の上映(ここで本作の中で唯一“本物”リーさんが鄭潮安としてスクリーンの中に登場します)が終わり、場内の静まり返った様子に客席に座っていたリーさんが隣のリンダに「騒ぎにならない内にここを出よう!」と声をかけるとソッと席を立ち出口に向かいます。ところが、客席の初老の男性が立ち上がると感動の涙を拭いスクリーンに向かって力一杯拍手を始めると、それに呼応するかのように場内の観客たちからも次々と大拍手&大歓声が沸き起こります!
そして場内にリーさんとリンダが立っているのを見つけた観客は、一斉に我らが“唐山大兄”に殺到すると驚くリーさんを担ぎ上げ、そのまま映画館の出口に向かって行進を始めます!
多くの苦難の果てに故郷である香港で遂に“ドラゴン”となったリーさんは、観客に抱え上げられたまま映画館の出口から外に飛び出る瞬間、背後で観客にモミクチャにされながらも懸命に自分を見送る妻に向かって振り返ると、弾けるような笑顔と共に声の限りに絶叫します・・・!

ブルース「リンダ?リンダ!・・・リンダァァ!」
リンダ「ブルース?・・・ブルース!・・・愛してるわ!」

この『ドラゴン〜』は、その後『ドラゴン危機一発』のタイ・ロケにおけるリーさんと兄の復讐に燃えるルーク・サンの製氷工場の決闘(この当時リーさんの周辺に起こったと言われる“私闘”を彷彿させるクンフー・ファイトこそこの『ドラゴン〜』のベスト・ファイトでしょう)、驚くほど本物のセットと酷似した“鏡の間”が登場する『燃えよドラゴン』(73)のシーン(ロバート・クローズ監督役はロブ・コーエン監督本人)、そしてクライマックスにおけるリーさんを長年苦しめた死神からブランドンを守り抜く“死亡遊戯”を経て、『燃えよドラゴン』の最終カットの撮影に挑むリーさんをリンダが見送るシーンで劇終となります。

この『ドラゴン/ブルース・リー物語』が製作されるまでは、それこそ無数のソックリさん武打星たちが主演するリーさんの伝記映画が作られ、残念ながらそれらの殆どが文字通り「ブルース・リーの出てないブルース・リー映画」的水準の作品だったと言わざるを得ませんでした。確かにこの『ドラゴン/ブルース・リー物語』も敢えてカテゴリーとして仕分けするとしたらジェイソン・スコット・リーという武打星主演によるソックリさん映画なのかも知れません。
それでも龍熱はこう強く言い切りたい!この『ドラゴン/ブルース・リー物語』には他のソックリさん伝記映画からは感じられなかった“世紀の闘神”ブルース・リーに対する限りない尊敬と、愛情と、そしてプライドが確かに感じられた作品なのだ!と。その私の想いは『ドラゴン〜』公開から19年経った今も決して変わる事はありません。
また今回の記事の冒頭でも触れましたが、この「ブルース・リーの出てないブルース・リー映画」では当初第8回にして大結局の『ドラゴン/ブルース・リー物語』の前の第7回で、リーさん原案にしてデビッド・キャラダイン主演『サイレント・フルート』(78)を取り上げる予定で、私は先日実際に本特集のレビュー目的で『サイレント・フルート』のVHSをビデオデッキに押し込みました。
ところが・・・その『サイレント・フルート』のVHSは何故か数秒再生した後にテープの頭の部分がデッキの中でプッツリと切断されてしまったのでした。これは私にとって何とも不思議な出来事でした。
私はこの時「ああ、これはもしかしたらリーさんはジェームズ・コバーンやスターリング・シリファントと共にインドを訪れた際に余り良い思い出が無かったロケハン旅行や、後年に自分の原案を元にして他者に手によって作られた映画を取り上げられるのが嫌なのかな・・・」と判断しまして、それならと当初の予定を前倒しする形で『ドラゴン/ブルース・リー物語』を本企画「ブルース・リーの出てないブルース・リー映画」のフィナーレとして取り上げた次第です。
そう、もしかしたら「ブルース・リーの出てないブルース・リー映画」というジャンルの存在を最も憂いでいるのは天国のリーさんだったのかも知れませんね・・・。
と言うわけで、“龍の年”特別企画第1弾として全7回に渡ってお届けして来ました「ブルース・リーの出てないブルース・リー映画」、如何でしたでしょうか?
当ブログ「超級龍熱」では、今後も様々な“龍の年”を記念する特別企画を準備中ですので、どうぞお楽しみに!

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