天下第一ジャッキー・チェンSP⑤
さてさて「サンダーアーム龍兄虎弟」幻のジャッキーvsシンシア・ラスロック戦の真実、その後編です。
私がこの「サンダー~」でジャッキーvsラスロック戦がお蔵入りしてしまった、との情報を初めて読んだのがベイ・ローガンが書き、日本でも素晴らしい翻訳本(^。^)が出た事で知られる「最強香港アクションシネマ」でした。私は最初に本書を原著で読んだ時に、まずこのジャッキーvsラスロック戦が企画されていた事に驚き、次に何故2人の対決がお蔵入りしたのか?自分の出演が宙に浮いたラスロックはどうなったのか?そしてラスロックが演じる予定だったキャラは最終的にどうなったのか?の3つの疑問の答えが激しく知りたくなったものの、その疑問は長年に渡って謎のままでした。
そして今回「スキップ・トレース」劇場パンフレットの原稿依頼を頂いた際に、劇中でのジャッキーvsイブ・トーレス戦に因んだ形でこの幻のジャッキーvsラスロック戦の真実を解き明かそう!と決意したのです。...
まずジャッキーvsラスロック戦がお蔵入りした理由ですが、この特集の第4回で触れたようにジャッキーのユーゴスラビアでの大怪我でした。このジャッキーの事故によって「サンダー~」の撮影が長期に渡って中断したため、嘉禾影業はひたすら待機状態となっていたラスロックの処遇を決めざるを得なくなります。
そこで嘉禾影業がラスロックに「サンダー~」でのジャッキーとの一騎打ちの代わりに出演を依頼したのが元彪主演「検事Mr.ハー/俺が法律だ!」でした。ラスロックはこの嘉禾影業のオファーを熟慮した結果承諾します。
このラスロックの「検事Mr.ハー~」出演の決断は結果的に正解でした。何故ならラスロックが「検事Mr.ハー」に出演した事で元彪vsラスロック、ラスロックvsカレン・シェパード(外人女ドラゴン最高の名勝負)、ラスロックvs黄錦燊という素晴らしいクンフーファイトが実現したからです。
そして私の3つ目の謎であるラスロックが降板した事でラスロックが演じる予定だった最強アマゾネスを演じたのは果たして誰か?ですが、私はこの長年の謎を私とFacebook朋友であるシンシア・ラスロック本人に直接メールで訊き、ラスロックから返事を貰う事に成功しました。
私の質問に快く返事をくれたラスロックはジャッキーの事故に始まり、最終的に彼女が「検事ハー~」出演に至る経緯を明かしてくれた後に「あの「The Armour of God」での私はリンダ・デンレイの役を演じるはずだったのよ!」との答えをくれたのでした。そう、これこそ私が長年知りたかった答えでした!
黒人女性空手家として世界的に知られるリンダ・デンレイは唐子道6段の実力者で、その組手でのハードヒットを信条とする闘いは彼女の出身地に因んで“テキサスの恐怖”の異名で知られています。
デンレイは空手家として1973年から1996年までの活動期間の間にほぼ9年間に渡って無敗を誇った実力者で、ロングビーチの国際大会でも4度の優勝を遂げるなど数々の大会に優勝していますし「ブラックベルト」誌の名誉殿堂者にも選ばれています。
「サンダー~」劇中の4人のアマゾネス軍団の左端のやや面長の女性がデンレイで、恐らくジャッキーがアマゾネス軍団全員を倒した後にラスロック演じる最強アマゾネスが登場しジャッキーと闘う、のシークエンスはラスロックの代わりに出演したデンレイが最初からアマゾネス軍団の1人としてジャッキーと激闘を展開する、に変更となったと思われます。
私がこうしてラスロック本人に取材を敢行してまでジャッキーvsシンシア・ラスロック戦の真実を解き明かした果てに思う事。
それはラスロックが「検事Mr.ハー/俺が法律だ!」で元彪と、「上海エクスプレス」ではサモハンとの対決を実現させ、そのどれもが80年代香港クンフー映画に刻まれる屈指の名勝負となりながら、肝心のジャッキーvsラスロック戦だけは「サンダーアーム龍兄虎弟」でお蔵入りした事でそのまま実現せずに現在に至っている、という何とも皮肉な現実です。
ジャッキー・チェンとシンシア・ラスロック。幸いな事にこの2人の類い稀なる武打星は今も元気に現役アクションスターとして活躍しています。ジャッキーとラスロックには、是非何時の日か2人が遥か昔に残したままの“忘れ物”を今度こそ実現して欲しいと強く願います。
Jackie Chan in The Armour of God.Too bad Jackie missed to fight against Cynthia Rothrock in the film.
Instead,Jackie fought with American karate champ Linda Denley who appears as one of amazon women.