まずはこの2枚の画像をご覧下さい。上が『ブルース・リー死亡遊戯』(78)で最初に撮影されたビリー・ロー(金泰靖)☓カール・ミラー(ボブ・ウォール)の“ロッカールームの死闘”で、下がウォールが一度アメリカに帰国後、諸事情で再度香港に呼び戻され撮り直したバージョン、つまり我々が実際に劇場で観た“ロッカールームの死闘”です。
初期撮影バージョンではビリーの髪型や着ている中国服が再撮影バージョンとは異なります。
そして新旧2つのバージョン最大の相違点がファイトシーンの舞台となったロッカールームのセットの大きさです。明らかに再撮影バージョンのセットの方が広々としたセットですし、立ち並ぶロッカーの位置も違います。
ではお蔵入りした初期バージョンのビリー☓ミラーの闘いは果たしてどんな闘いだったのか?
私が生前のボブ・ウォールにインタビューした際、ウォールが唯一回答を拒否したのもこの謎に対する私の質問でした。
そしてロバート・クローズ監督、アクション監督のサモハンが初期バージョン撮影終了後にわざわざウォールを香港に呼び戻してまで再撮影を行った理由は何だったのか?
私が2005年にサモハンにインタビューした際、私に与えられたインタビューの時間は30分でした。
その30分の中でサモハンに『燃えよドラゴン』(73)オープニングの李小龍との組手シーン、金泰靖☓卡薩伐の“温室の決闘”、そしてこのインタビュー最大のミッションだった金泰靖☓黄仁植戦は撮影したか?について全て訊き終わった後で、さらに“ロッカールームの死闘”初期バージョンについてサモハンに問い質す事はさすがに時間的に不可能でした。
私が何故これほどまでに78版『死亡遊戯』、またはその78版完成に至るまでに密かに撮影され、そのまま何らかの理由でお蔵入りした金泰靖☓黄仁植の1階を想定したファイトシーンや“ロッカールームの死闘”初期バージョンに強い関心と執着を持ち続けるのか?
それは78版『死亡遊戯』劇場公開当時はガチな李小龍信者たちから「所詮は偽者のアクションシーンだろう」と殆ど見向きもされなかった金泰靖や元彪吹き替えによるビリー・ローのファイトシーンが、長い年月を経てファンの意識が向上した事も含め、実はそれがサモハンが全力で構築した、文字通り“偉大なる巨漢”入魂の“猛龍再現アクション”であり、今こそ正しく再評価されるべきだとの思いがあるからです。
そう、このサモハンが遺した“闘神の影武者”3つのファイトシーンこそ、李小龍監督&武術指導&主演による渾身の意欲作『死亡遊戯』が不運にも未完成に終わったがために世に生み出された、まさに奇跡の副産物なのです。
私は改めてこれら“闘神の影武者”の激闘が刻み込まれたファイトシーンのプリントが今もフォーチュンスター社のフィルムアーカイブの奥に眠っている事を心から願います。
Above Kim Tai Chung against Bob Wall locker room fight which delated from theatrical virsion.
Below Kim Tai Chung against Bob Wall locker room fight which re-shoot for theatrical virsion.