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Channel: 超級龍熱
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俺たちが愛した思い出の君よ・・!綾野剛&柄本佑主演『花腐し』11月公開!

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さて、昨日は荒井晴彦監督、綾野剛&柄本佑主演『花腐し』(23)を試写で観て来ました。日本映画はまだまだ死んではいない!と感じさせる作品でした。

斜陽のピンク映画界で映画監督として生きる栩谷(綾野剛)は、恋人で女優の祥子(さとうほなみ)が同じ映画監督の男性桑山と心中自殺した事を知る。なぜ祥子が桑山と心中したのか?なぜなんだ?混乱と悲しみのまま、祥子の実家を弔問に訪れた栩谷を祥子の両親は荒々しく追い返す。

祥子と暮らしたアパートの家賃を滞納していた栩谷はアパートの大家(マキタスポーツ)から取り壊したいアパートに1人居座っている男性を説得してくれたら滞納した家賃分+経費を払うと言われ渋々承諾する。栩谷が訪れたアパートで部屋から姿を見せた怪しげな男性伊関(柄本佑)は、最初こそ栩谷と掴み合いになるも、すぐに打ち解け、栩谷を自分の部屋に誘う。かつては脚本家を目指していたと明かす伊関に不思議な親近感を覚えた栩谷は自分の恋人が心中した事。それも自分と同じ映画監督の男性と一緒に、と伊関に打ち明ける。それを聞いた伊関も自分が初めて付き合った女性について語り始めるのだった。

ここまでが映画の導入部分で、ここから綾野剛演じる栩谷と、柄本佑演じる伊関の2人がかつて自分が愛した女性との様々な思い出を語り続けます。そしてやがて2人はお互いが愛した女性の驚くべき、そして余りにも切ない偶然に辿り着くのでした。

デジタル化という時代の荒波に押し流されようとしているピンク映画の世界で映画を撮りたくても撮れない自分に対する焦りと悲しみ。それを傍らで見守る祥子に対する素直になれない自分への苛立ちにもがく栩谷を綾野剛はストイックなまでに抑えた、されどピュアな佇まいで見事に演じ切っています。

その栩谷と酒を酌み交わしながら一見飄々と生きる伊関もまた脚本家としての成功という厚い壁にぶち当たり苦しむ自分の怒りと挫折感を愛する女性に向けてしまった過去に苦しみ続けている。その伊関の秘めた心の葛藤を柄本佑は巧みな台詞回しと共に実に味わい深く演じています。

そしてある意味この『花腐し』の狂言回しにして影の主役である祥子を可憐に演じたさとうほなみ。実に存在感溢れる女優で、この映画はさとうほなみ演じる祥子無くして成立しないと言っても過言ではないでしょう。

ただ日活ロマンポルノ出身の荒井監督作品なだけに、劇中では激しいセックスシーンが多々出て来ます。特に映画の後半部分のそれは映画を観ていた私も「この映画はちょっと・・」と思い始めたくらい、それは執拗です。でも私は改めて荒井監督に教えられました。映画は最後のエンドクレジットが終わるまで観て初めて1本の映画を観終わり、その映画を語る事が出来るのだと。この『花腐し』がまさにそれでした。

普段口下手で無愛想な栩谷がどれほど祥子を深く愛していたか?そして祥子が本当に愛した男性は誰だったのか?どうか皆さんもくれぐれもエンディングロールが終わり「監督:荒井晴彦」のクレジットが出る、その瞬間まで席を立たずに映画を観て頂きたいと思います。

この『花腐し』は11月10日からテアトル新宿ほか全国ロードショー公開との事ですので是非!


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