撮影から51年経って遂に一般公開された『死亡遊戯』は3階“虎殿”のダン・イノサント☓田俊&解元戦。
殆どのファンがそれまでスチール写真のみでしか観れなかった解元が丸太を手にイノサントと闘う様子が動く映像で観れた事に感激するのは無理ないでしょう。
今回の『最後的死亡遊戯』第2回では、そこからさらに踏み込んでこの五重塔内で繰り広げられる3人のウェポンファイト自体を検証したいと思います。
李小龍演じる主人公がまだ下階で蟷螂拳の達人(ターキー木村)と闘っている間に3階に上がった田俊と解元を待っていたのがフィリピノエスクリマの名手イノサントでした。
イノサントは2本のカリスティックを「カンカカカンカン!カンカン!」と繰り返し打ち鳴らし、五重塔の侵入者2人に対して「自分は今からお前たちと闘う!」と宣戦布告します。
それに対して丸太を手に戸惑う解元と、後ろから解元に向かって身勝手に攻撃を指示する田俊。
改めてこの五重塔の番人☓五重塔の挑戦者たちのスリリングな邂逅シーンがロバート・クローズ監督作品『ブルース・リー死亡遊戯』(78)で主人公ビリー・ローが挑むクライマックスファイトの冒頭部分として観れなかった事が残念でなりません。
ここからのイノサントが突進して来る解元の丸太をカリで叩き落とし、お互い素手による乱打戦から最後はイノサントの顔面蹴りで解元が失神するまでのファイトは素晴らしい完成度です。
李小龍監督はこのダン・イノサント☓解元の闘いで、観客にイノサントが何の武術のエキスパートか理解させ、イノサントがエスクリマだけでなくケンポーカラテの名手である事を明らかとする事で、この“フィリピンの魔杖師”がトータルバランスに優れた格闘家である事を私たちに強く印象付ける事に成功しています。
また解元を倒したイノサントが後ろに控える田俊にユックリと振り返り、悠然と両手を揺らし挑発する様も実にインパクトあるパフォーマンスです。
さらに田俊が腰に差した棍棒を取り出すと、それを見たイノサントが口元を歪ませ闘志を漲らせながら、背後の椅子からカリを取り猛然とそれを旋回させ田俊を挑発するシーンも「何でクローズ監督はこんなカッコイイ姿のイノサントを78版『死亡遊戯』でカットしたのか!」と憤然とした気持ちにさえなります。
一説には78版『死亡遊戯』製作の際に、この李小龍監督による五重塔内ファイトの(田俊&解元出演シーン込み)撮影済みフィルムを観たクローズ監督がかなり辛辣な評価をしていたとの情報もあり、結果的に約45分の五重塔内ファイトが約11分のレッドペッパータワーのファイトとなった背景には、クローズ監督の存在とその監督自身の思い切った判断が大きなウェートを占めていたのかも知れません。
この直後、ターキー木村を倒した李小龍が3階に駆け上がって来るお馴染みのシーンとなりますが、この李小龍、いやビリー・ローが階段を駆け上がって来る前に、もしイノサント☓田俊&解元のウェポンファイトが插入されていたら、私たちの『ブルース・リー死亡遊戯』のクライマックスファイトに対する印象は全く異なっていたかと思うと、改めて残念な気持ちです。
諸事情により切り離されたイノサント☓解元の丸太戦とビリー・ロー☓パスカルのヌンチャク戦が再び1つのファイトシーンとして繋ぎ合わさるまで45年という長い年月が必要だった。
その悲しくも切ない事実こそが永遠の未完成作品『死亡遊戯』を最も象徴する出来事なのかも知れません。Let's the Death Game Begin!!
今回も画像提供のTさんに感謝。ありがとうございました😊。
Long time missing log fight scene from Game of Death.