「燃えよドラゴン ザ・モニュメンタル」第3回は、今も世界のアクション映画史に刻まれた伝説的モニュメント『燃えよドラゴン』(73)に李小龍と共に出演した2人のアメリカ人俳優に触れたいと思います。
まず賭け事で人生を狂わせ、それこそ逃げるようにアメリカからハン(石堅)の武術トーナメントに参加したローパーを演じたジョン・サクソン。恐らく当時私たち日本の映画ファンが『燃えよドラゴン』で辛うじて名前を知っていた俳優は『許されざる者』(60)や『シェラマドレの決斗』(66)などに出演していたこのサクソンだけだったでしょう。そして当初サクソン本人も「自分が『ENTER THE DRAGON』に“主演”する事がこの映画の格上げになる」と自負していました。
実際に脚本担当のマイケル・オーリンが書いた当初のシナリオでは、映画のクライマックスで李小龍扮する李がハンの用心棒ボロ(楊斯)を倒した後、ローパーがハンと対決し倒す展開だったとの説もあり、もしロバート・クローズ監督がその設定を選択していたら、それこそ世界アクション映画の歴史が大きく変わってしまっていたでしょう。ただそのクローズ監督がギャンブル好きで女性に手が早いチャラ男のローパーを映画の最後の最後で「俺にはどうしても越えられない一線がある!」とハンが命令した李との対決を拒否し、眼の前のボロに敢然と闘いを挑む“男樹”を持った人間として完結させた事で、それまで“B級映画俳優”だったジョン・サクソンは“世界のジョン・サクソン”となり得たのでした。
もう1人、同じくアメリカからハワイ経由でハンの武術トーナメントに参加した黒人空手家ウィリアムズ(ジム・ケリー)も、アメリカでの人種差別に絶望し、その怒りと悲しみをぶつけるかのように参加したハンの武術トーナメントに向かう船上で戦友のローパーと再会します。元テニスプレイヤーのケリーは、その素晴らしい運動神経から繰り出すリズミカルな空手アクションを駆使し、劇中のトーナメントでは無頼漢な空手家パーソンズ(ピーター・アーチャー)を見事に撃退します。
しかしウィリアムズは要塞島の夜間外出禁止令を破り野外で型の稽古に励んでいる所をハンの警備員に目撃され、ハンに呼び出され厳しい尋問を受けます。ここでのウィリアムズとハンの激しい舌戦こそジム・ケリー扮する黒人空手家ウィリアムズの真骨頂で、ハンに目撃した不審者(李振強)の名前を言え!と迫られても、自由を愛し差別を憎むウィリアムズは1度も言葉さえ交わしていない中国人武道家の名前を明かす事を毅然と拒否!そのまま要塞島の主との一騎討ちに挑みます!このシーンのジム・ケリーは何度観ても震えるほどカッコイイ!そう、ウィリアムズもまたローパーと同じく“男樹”に殉じた空手家だったのです。
ジョン・サクソンは2020年に、ジム・ケリーは2013年にそれぞれ鬼籍に入りました。生前のサクソンもケリーも機会あるごとに李小龍と『燃えよドラゴン』で共有した素晴らしい思い出を私たちに語ってくれました。そう、私たち李小龍信者にとっても少林寺の使者李振強と共に暗雲立ち籠めるハンの要塞島に乗り込んだローパーとウィリアムズは『燃えよドラゴン』に決して欠かせない伝説のドラゴンたちなのです。You Wanna Bet? A Human Fly!! 我が名は李小龍!ENTER THE DRAGON!!ドラゴン登場!!
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