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Channel: 超級龍熱
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「死亡遊戯:完全版2015~AFTER THE GAME」 ③ 闇に潜む最強の番人!“未知の恐怖”編

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「タンタン!ダダン!」ハイ・ティエンが5階への階段を駆け上がった瞬間、何かがハイ・ティエンの眼前を横切った。ドサッ!グシャッ!・・・。
それは音を立てて床に叩き着けられると、暫く痙攣していたがすぐに動かなくなった。それが全身の骨をグチャグチャにされたジェームズの最後だった。
「ジェームズ・・・」ハイ・ティエンはここまで五重塔の挑戦者として共に闘った男の亡骸を無言で見つめていたが、すぐに薄暗い5階に視線を移し、用心深くフロア全体に目を凝らす。「これは・・・酷い匂いだ」
ハイ・ティエンはまるで動物の餌場のような臭気が漂う5階の中央に五重塔の最上階へと繋がる階段を確認すると、無意識に階段に向かって歩を進める。
「ズン!ズン!ズン!」そのハイ・ティエンに向かってフロアの奥の闇の中から真っ黒で巨大な影が迫って来た!
「はっ!?」ハイ・ティエンは自分の頭部に向かって伸びて来た異様に長い腕を辛うじて右手で弾き飛ばす!「アダォ!」
そしてその五重塔最後番人の正体を見極めようと、身構えながらも目の前の闇に向かって懸命に目を凝らす。
それは黒人だった。だがその黒いサングラスをかけ青のシャツに白の短パンを身に纏った黒人は優に2メートルを超える巨人だった。
「この黒人・・・何という大きさだ!」黒人・・・ハキム(カリーム・アブドゥル・ジャバール)は唖然とするハイ・ティエンに向かって再び無言で突進すると、何の感情も表さずにハイ・ティエンの胸板を蹴り飛ばす!
「ドガァ!」「あっぐああ!」仰向けに床に転がるハイ・ティエン!!ハイ・ティエンは自分のトラックスーツの胸板にハキムの巨大な足型が残った事より、その蹴りの衝撃で肺を痛めた事を危惧しながらも、すぐに起き上がるとハキムの長く強靱な足にスライディングしながらハキムの足を蟹挟みで払う!
「アタアオオ!」ドオォォォン・・・!
ユックリと倒れる巨人!・・・だがハイ・ティエンはハキムの片足が持つ人間離れした脚力で逆に自分の足が折られそうになるのを察知し、すぐに蟹挟みのロックを解くと立ち上がる。
ハイ・ティエンは同じく悠然と立ち上がり、無言で自分をジィッと見つめるハキムに再び身構えながら、心の奥でこう呟いていた。
「この黒人、あの長く強靱な手足でこれまで何人もの塔の挑戦者たちを葬って来たに違いない。まるで鋭利な鎌で容赦なく獲物を引き裂くマンティス(螳螂)のような男だ。だが・・・この男にも必ず何処か弱点があるはず。そう、きっとあるはずだ!」
そのハイ・ティエンの心の奥の焦燥を見透かしたかのようにハキムが猛然とハイ・ティエンに迫る!それを見たハイ・ティエンがサイドステップする間もなく、ハキムの素早く強烈な平手がハイ・ティエンの顔面にヒット!
「バシィン!」「ぐううあ!」思わずヨロめくハイ・ティエンの頭部に、今度はハキムの巨大なブーメランのような廻し蹴りが炸裂!!
「あぐああ!」血反吐を吐きながら足許に立つ花瓶に身体ごと突っ込むハイ・ティエン。ハキムは頭を振りながら立ち上がろうとするハイ・ティエンを頭ごと床に散乱した花瓶の鋭利な破片に押し付けようと万力でハイ・ティエンの後頭部を押え込む!
「んぐぐうう・・・・アダァオォ!」ハイ・ティエンはこのピンチを柔軟な身体を駆使して、逆立ちから驚異的な“鯱蹴り”でハキムの頭部を蹴り上げ脱出に成功!
何とか立ち上がったハイ・ティエンにハキムは再び顔面に鉄拳を叩き込むと、さらにハイ・ティエンの首を荒々しく掴み、そのまま思い切り窓際の柱に顔面を叩き着ける!「グシャ!」「うぐあぁ!」
ハイ・ティエンは激痛に顔を歪ませながらもハキムの巨大な掌を必死に払いのけ、黒い魔人の猛攻から何とか逃れようと窓際をヨロヨロと4階への階段方向に向かう。だが冷酷な闇の番人は背後からハイ・ティエンを捕まえると窓枠に力ずくでハイ・ティエンを押し付け、顔面を鮮血に染め呼吸も粗い挑戦者のダメージをジックリと観察し終わると、意識朦朧としているハイ・ティエンの両眼目掛けて2本の指を突き刺そうと思い切り右腕を叩き込んだ!
「はっ!?」そのハキムの攻撃をハイ・ティエンが僅かに首を動かし寸前でカワす!
「バリバリ!」そのままハキムの右腕は窓の障子を突き破り、その破れた窓から強烈な太陽光線が飛び込んで来た!「ウギャギャ?ギャア!ギャウウウウ!」
ハキムがその太陽光線を顔面に浴びた瞬間、黒い魔人は異様な叫び声を上げサングラス越しに顔を覆い窓際から後退!
ハイ・ティエンは窓に凭れかかったまま、突如ハキムが意味不明な悲鳴を上げながら怯えるように窓際から後退するのを唖然と見つめていたが、すぐにそれが自分の背後の破れた窓から差し込んで来る太陽光線にある事を悟った!!
「そうか・・・光だ!奴の・・・マンティスの弱点は闇に差し込むこの大自然の光だ!」

“闇が支配する世界に聖なる光”が差し込む時、いま五重塔最強挑戦者の反撃が始まる!ハイ・ティエンは咄嗟に自分の背後の窓を振り返ると、片っ端から窓の障子に正拳突きを叩き込んでいく!
「アジョ!アジャ!アジョ!アジョ!アジョォォォ!!!」
「バシュ!バシュ!バシュバシュバシュ!」その神々しいまでの光は“闇の番人”が長きに渡り支配して来た暗く陰惨な処刑場を、まるで美しく清めるかのように次々と5階から闇を消し去っていく・・・!
「ギャアア!・・・ウガガガァ!」ハキムはハイ・ティエンによって破られた窓から差し込む光から逃げ回りながら、そのまま5階中央にある最上階への階段の陰にその巨体を隠そうと必死に身を屈める。
「マンティスよ、勝負だ!」ハイ・ティエンは思い切り助走を取ると高々と跳躍し、ハキムの顔面に渾身のジャンピングキックを叩き込む!
「アチョオオォォ!」「バキィ!」「グギャア!」
ハイ・ティエンのキックを顔面に浴びたハキムは、粉々に砕けたサングラスと共に地響きを立てて床に崩れ落ちた!ドタアァァァン・・・!
着地したハイ・ティエンはすぐにハキムに飛びかかると、ハキムの首をガッチリとネックロックで固める!ハキムは顔面から血を流しながら何とかネックロックを外そうとモガくが、ハイ・ティエンの勝負を懸けたネックロックは完璧な形でハキムの首を固めていた。
「さあ、マンティス、もうお前は闘える身体ではない。このまま私を上階に通すと言うんだ!」勝利を確信したハイ・ティエンがそうハキムに呼びかけた時!
「グググ・・・アグアグアァ!」ハキムが苦しげな呼吸音と共に「カッ」と目を見開いた!「あっ!こ、これは!?」
ハイ・ティエンは見た。そのまるで悪魔のように赤味を帯びたハキムの両目を!!自らの最後を予期したハキムは、自分の首筋に深く食い込んでいるハイ・ティエンの腕に噛み付く!「ガブッ!」
「あぐっ!何故だ?何故まだ闘いを続るんだ?さあ、言うんだ!私を上階に通すと言ってくれ!ただ一言“イエス”とだけ言ってくれ!!」
だがハイ・ティエンは自分の腕に深く噛み付いたハキムの歯が徐々に腕の骨まで達しようとしている事を悟ると、そのまま怒りと悲しみの咆哮を上げながらハキムの首をヘシ折った!!「オオアアア・・・・アチャアアアアァァ!」「ボキボキィ!」
ハイ・ティエンは自分の両腕の中で激しくモガいていたハキムがガックリと動きを止めた事で、この長く凄惨な死闘が幕を閉じたを知った。

ハイ・ティエンはハキムの巨大な亡骸を押し退けながら立ち上がると、ヨロヨロと窓際に歩き出す。途中で天井から吊るしたサンドバッグに遮られながらも窓際に達したハイ・ティエンは、自分が障子を突き破った窓から、五重塔の1階で自分からの合図を待っているはずのアコンに向かって絞り出すような雄叫びを上げる。
「アコ~ン!やったぞぉぉ!塔の番人は全て倒したぞぉぉ!アコ~ン!?」
すぐに遥か下の地上から「ハイ・ティエン!無事なのか?5階の“化け物”も倒したんだな?もうそこは安全なんだな!?だったら降りて来てくれえ!」とのアコンの声が聞こえて来た。ハイ・ティエンは「ああ、もう危険はない!私も今からそこに降りていく!」と返すと、そのまま4階への階段をフラフラと降りていく。
ハイ・ティエンはハキムとの壮絶な闘いで全身に深いダメージを負ってはいたが、それでも4階の“龍殿”から3階の“虎殿”へと何体もの亡骸を目にしながら階段を降りていく。
そして3階でもう1度窓際に歩み寄り、2つのコブシで障子を破ると「アコ~ン!妹は・・・リーエルたちはどうなっているんだ?無事なんだなー!?」と声をかけた。
だが、そのハイ・ティエンの呼びかけに応えたのはアコンではなく謎の男の声だった・・・!
「お前の妹と弟ならここにいるぞ?ハイ・ティエン!」その男の冷たく勝ち誇ったような声はハイ・ティエンがこれまで1度も聞いた事がない英語の声だった。
ハイ・ティエンは強い警戒心と共に「ユーは誰だ?アコンはどうした?リーエルたちがそこにいるのか!」と問いかけるが、それに返って来たのは愛しいリーエルとローバの声だった。
「ハイ・ティエン!私たちはここよぉ!」「哥哥!怖いよぉ!哥哥!」
「リーエル?ローバ?いま降りていくぞ!待ってろぉ!」ハイ・ティエンは思わず窓枠を掴みながら叫ぶ。
だがそのハイ・ティエンの絶叫に返って来たのは、またしても冷酷な男の声だった。「ハイ・ティエン、さあ、余り時間がないぜ!妹たちの命が惜しかったらここに降りて来い!いいか、まだお前の“ゲーム”は終わってはいないんだ!」
そう、ハイ・ティエンの命懸けの“デスゲーム”はまだ終わってはいなかったのだ。
ハイ・ティエンは暫くジッと目を閉じていたが、すぐに口元の血を静かに拭うと、ユックリと、そして用心深く階段を降りて行った・・・!
以下、衝撃のクライマックス「血染めのトラックスーツに誓う! “大結局”編」に続く!!

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