お待たせしました!葉偉信導演、甄子丹&熊黛林主演「葉問3」(15)観ました。
大変よく出来た武打片でしたし、ドニー兄貴生涯の代表作となった“詠春宗師傳奇”系列の完結編(?)に相応しい重厚かつ感動の作品に仕上がっていました。
映画は1959年の香港を舞台に始まり、序盤からいきなり葉問(ドニー兄貴)と李小龍(陳國坤)の煙草を小道具に使った練武シーンが登場します。
ダニー李小龍、良い味出していました。ただ李小龍の出番はこのオープニングと中盤で葉問にダンスを教える代わりに念願の弟子入りを許されるシーンの2か所だけで、これはこの「葉問」シリーズが既に“李小龍の師だった葉問の物語”から一本立ちし、映画として独自の作品像を確立している事の証明でしょう。
そう、この「葉問3」のメインテーマは葉問と葉問と同門にして野心溢れる詠春拳高手である張天志(張晉)による“詠春正宗比武”と、長年葉問と寄り添い生きて来た愛妻である張永成(熊黛林)が直面する余りにも悲しく美しい夫婦の愛の物語なのです。(そしてその感動の物語を一層盛り上げるのが、もうこのシリーズには欠かせない川井憲次の音楽!!)
まず私が気になったのが今回の動作導演がシリーズを通しての動作導演だった洪金寶ではなく、袁和平に変更された点ですが、結果として袁和平は巨匠らしく十分過ぎるほどその実力を発揮してはいましたが、やはり詠春拳独特の接近戦での短打からの連環撃シーンでは、洪金寶が構築に成功していた一瞬で見せる一発一発の破壊力の面で見劣りしていましたね。
実はこの「葉問3」撮影時の現場でも、最初に袁和平が付けた殺陣を見ていたドニー兄貴が「いや、それよりもこれでどうかな?」と自分考案の殺陣に変更し、それを周りの武師たちに「なあ、みんな!?」と振ると、武師たちも「異議なし!」とドニー兄貴に応じ、それに袁和平が「判った。それでいこう」と折れるというちょっとショッキングな風景が見られたそうです。
それでも映画全体にバランス良く配置された数々の武打シーンは、そのどれもが私たちが「イップマン/葉問」(10)以来、待ちに待ったドニー葉問の華麗にして切れ味鋭い詠春功夫である事に間違いはなく、中でも映画の中盤に登場する病院のエレベーター内で葉問が自分に襲いかかるタイ拳士(サラット・カンウィライ=Sarut Khanwilai。飯星景子さんブログ情報♪多謝!)の襲撃に愛妻を守りながら応戦するユニークかつ斬新な決闘シーンは、狭い空間にこそその破壊力を発揮する詠春拳の無敵振りと共に素晴らしい効果を見せています。
またキャスト面でも「燃えよデブゴン10友情拳」(78)を初めとする数々の作品で“詠春拳王”梁賛に扮して来た梁家仁や、前作から引き続き出演の“五毒”羅莽も顔を見せているのが嬉しいですね。
余談ですが、梁家仁は過去のインタビューでも彼自身がリーさんこと李小龍の熱烈なファンである事を語っていますし、それが高じた梁家仁は武打星を目指して邵氏公司の張徹導演に手紙を書く事となったわけです。
そして元プロボクシング統一世界王者マイク・タイソンです。アメリカからやって来た傲慢な不動産開発業者フランクに扮したタイソンとドニー葉問の世紀の対決は、映画の中盤に用意され、2人は3分間と限定された時間で男対男の誇り高き勝負に挑みます。このドニー兄貴vsタイソンの一騎打ちの詳細は、まだ未見の方もいらっしゃると思うのでここでは敢えて細かくは触れませんが、これまた期待通りの完成度に仕上がっています。
そして今回この「葉問3」で、事実上葉問の前に最強の敵として立ちはだかる張天志に扮した張晉ですが、張晉が現在の香港クンフー映画の武打星の中でドニー兄貴と真っ向対峙出来る数少ない本格派の武打星である事は、張晉がこれまで出演した「グランドマスター」(13)や「殺破狼Ⅱ」(15)を見れば一目瞭然でしょう。
ただラストのドニー葉問と張天志が繰り広げる“詠春正宗比武”を観ながら私が感じた事は、やはり張晉はドニー兄貴と真っ向勝負する武打星としてはまだ線が細いな、でした。
これは「イップマン/葉問」でドニー葉問を徹底的に苦しめたツィッターに扮した故ダレン・シャラヴィの憎々しいまでの存在感と比較すると明白だと言わざるをえません。そんな私も、この葉問vs張天志の決闘シーンの最後の最後に葉問が放つ“一撃”を目の前にした時は「嗚呼、この映画はリーさん、いやブルース・リー信者は絶対に見るべき映画だな」との思いを強くしました。その理由はこの2人の決着シーンを観ると嫌でも判ります。
最後に私が言いたい事。それはこの「葉問3」がドニー兄貴の圧巻の詠春功夫を堪能する作品であると同時に、葉問と張永成という移り住んだ香港で慎ましく、そしてお互いが寄り添うように生きて来た夫婦の美しい純愛物語である事を深く理解して観て頂きたい作品だという事です。
それは愛する妻の願いに応えて葉問が懸命に悲しみを押し殺しながら永成の眼前で木人椿を静かに打って見せるシーンで、ドニー葉問が全ての悲しみを自分の背中だけで表現して見せる素晴らしく感動的な場面が全てを物語っています。
私は1本の香港クンフー映画で、これほど夫婦間の固く崇高な絆を描いた作品を知りません。結果として前作「イップマン/葉問」の感動と興奮を超えるには至らなかった「葉問3」ですが、それでも私はドニー兄貴を世界のスーパースターへと押し上げた「葉問」シリーズの第3作としては十分に合格点を進呈出来る作品だと言い切りたいですね。
最後になりましたが、この「葉問3」鑑賞の機会を頂いたM.Kさんに厚く感謝します。ありがとうございました。
大変よく出来た武打片でしたし、ドニー兄貴生涯の代表作となった“詠春宗師傳奇”系列の完結編(?)に相応しい重厚かつ感動の作品に仕上がっていました。
映画は1959年の香港を舞台に始まり、序盤からいきなり葉問(ドニー兄貴)と李小龍(陳國坤)の煙草を小道具に使った練武シーンが登場します。
ダニー李小龍、良い味出していました。ただ李小龍の出番はこのオープニングと中盤で葉問にダンスを教える代わりに念願の弟子入りを許されるシーンの2か所だけで、これはこの「葉問」シリーズが既に“李小龍の師だった葉問の物語”から一本立ちし、映画として独自の作品像を確立している事の証明でしょう。
そう、この「葉問3」のメインテーマは葉問と葉問と同門にして野心溢れる詠春拳高手である張天志(張晉)による“詠春正宗比武”と、長年葉問と寄り添い生きて来た愛妻である張永成(熊黛林)が直面する余りにも悲しく美しい夫婦の愛の物語なのです。(そしてその感動の物語を一層盛り上げるのが、もうこのシリーズには欠かせない川井憲次の音楽!!)
まず私が気になったのが今回の動作導演がシリーズを通しての動作導演だった洪金寶ではなく、袁和平に変更された点ですが、結果として袁和平は巨匠らしく十分過ぎるほどその実力を発揮してはいましたが、やはり詠春拳独特の接近戦での短打からの連環撃シーンでは、洪金寶が構築に成功していた一瞬で見せる一発一発の破壊力の面で見劣りしていましたね。
実はこの「葉問3」撮影時の現場でも、最初に袁和平が付けた殺陣を見ていたドニー兄貴が「いや、それよりもこれでどうかな?」と自分考案の殺陣に変更し、それを周りの武師たちに「なあ、みんな!?」と振ると、武師たちも「異議なし!」とドニー兄貴に応じ、それに袁和平が「判った。それでいこう」と折れるというちょっとショッキングな風景が見られたそうです。
それでも映画全体にバランス良く配置された数々の武打シーンは、そのどれもが私たちが「イップマン/葉問」(10)以来、待ちに待ったドニー葉問の華麗にして切れ味鋭い詠春功夫である事に間違いはなく、中でも映画の中盤に登場する病院のエレベーター内で葉問が自分に襲いかかるタイ拳士(サラット・カンウィライ=Sarut Khanwilai。飯星景子さんブログ情報♪多謝!)の襲撃に愛妻を守りながら応戦するユニークかつ斬新な決闘シーンは、狭い空間にこそその破壊力を発揮する詠春拳の無敵振りと共に素晴らしい効果を見せています。
またキャスト面でも「燃えよデブゴン10友情拳」(78)を初めとする数々の作品で“詠春拳王”梁賛に扮して来た梁家仁や、前作から引き続き出演の“五毒”羅莽も顔を見せているのが嬉しいですね。
余談ですが、梁家仁は過去のインタビューでも彼自身がリーさんこと李小龍の熱烈なファンである事を語っていますし、それが高じた梁家仁は武打星を目指して邵氏公司の張徹導演に手紙を書く事となったわけです。
そして元プロボクシング統一世界王者マイク・タイソンです。アメリカからやって来た傲慢な不動産開発業者フランクに扮したタイソンとドニー葉問の世紀の対決は、映画の中盤に用意され、2人は3分間と限定された時間で男対男の誇り高き勝負に挑みます。このドニー兄貴vsタイソンの一騎打ちの詳細は、まだ未見の方もいらっしゃると思うのでここでは敢えて細かくは触れませんが、これまた期待通りの完成度に仕上がっています。
そして今回この「葉問3」で、事実上葉問の前に最強の敵として立ちはだかる張天志に扮した張晉ですが、張晉が現在の香港クンフー映画の武打星の中でドニー兄貴と真っ向対峙出来る数少ない本格派の武打星である事は、張晉がこれまで出演した「グランドマスター」(13)や「殺破狼Ⅱ」(15)を見れば一目瞭然でしょう。
ただラストのドニー葉問と張天志が繰り広げる“詠春正宗比武”を観ながら私が感じた事は、やはり張晉はドニー兄貴と真っ向勝負する武打星としてはまだ線が細いな、でした。
これは「イップマン/葉問」でドニー葉問を徹底的に苦しめたツィッターに扮した故ダレン・シャラヴィの憎々しいまでの存在感と比較すると明白だと言わざるをえません。そんな私も、この葉問vs張天志の決闘シーンの最後の最後に葉問が放つ“一撃”を目の前にした時は「嗚呼、この映画はリーさん、いやブルース・リー信者は絶対に見るべき映画だな」との思いを強くしました。その理由はこの2人の決着シーンを観ると嫌でも判ります。
最後に私が言いたい事。それはこの「葉問3」がドニー兄貴の圧巻の詠春功夫を堪能する作品であると同時に、葉問と張永成という移り住んだ香港で慎ましく、そしてお互いが寄り添うように生きて来た夫婦の美しい純愛物語である事を深く理解して観て頂きたい作品だという事です。
それは愛する妻の願いに応えて葉問が懸命に悲しみを押し殺しながら永成の眼前で木人椿を静かに打って見せるシーンで、ドニー葉問が全ての悲しみを自分の背中だけで表現して見せる素晴らしく感動的な場面が全てを物語っています。
私は1本の香港クンフー映画で、これほど夫婦間の固く崇高な絆を描いた作品を知りません。結果として前作「イップマン/葉問」の感動と興奮を超えるには至らなかった「葉問3」ですが、それでも私はドニー兄貴を世界のスーパースターへと押し上げた「葉問」シリーズの第3作としては十分に合格点を進呈出来る作品だと言い切りたいですね。
最後になりましたが、この「葉問3」鑑賞の機会を頂いたM.Kさんに厚く感謝します。ありがとうございました。