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心優しき麻薬運搬人は90歳!クリント・イーストウッド監督&主演「運び屋」3月公開。

さて、昨日は都内某所でクリント・イーストウッド監督&主演「運び屋」(18)を試写で観て来ました。最初に書きますが、素晴らしい作品でした。

退役軍人で有能な高級ユリの生産業者アール・ストーン(クリント・イーストウッド)は仕事一筋の男で、例え自分の娘(実娘アリソン・イーストウッド)の結婚式の日でもユリの品評会を優先してしまい、以来愛妻(ダイアン・ウィースト)には離婚され、娘とは十数年も断絶状態でした。
そんなアールが90歳になる頃、インターネットの普及でアールのユリ生産は急激に落ち込み、結果アールはユリ農園も自宅も差し押さえられ、離婚した妻を頼ろうにもこれまで家族を顧みなかったアールを妻や娘は激しく拒絶するのでした。
そんな八方塞がりとなったアールに孫娘の結婚式で怪しげなメキシコ系の男が声をかけて来ます。「じいさん、アンタ今まで1度も違反切符切られてねえんだってな。どうだい?ただ車を運転するだけでいい金になる仕事があるんだがなぁ?」
アールが藁にもすがる気持ちで引き受けたこの仕事。実はこれこそ麻薬組織による麻薬ドラッグの運搬人、通称“運び屋”だったのです。
途中でそれに気がついたアールですが、アールには1人だけ自分に優しい孫娘の結婚式費用、自分の憩いの場だった退役軍人施設の復旧費、そして我が家とユリ農園を取り戻すためにどうしてもこの仕事が必要でした。戸惑いながらもトラックを走らせるアール。
そのアールを最初は威嚇し高圧的な態度だった麻薬販売人たちも何時も飄々とトラックを運転し、途中で平気で寄り道しながらも完璧に“運び屋”の仕事を務める老人のアールに次第に心を許し笑顔で接するようになり、遂にアールは麻薬グループのボスであるラトン(アンディ・ガルシア)の豪邸に招かれ、ラトンから手厚いもてなしを受けるまでになるのでした。
しかしアールが“運び屋”の仕事を3回、5回、さらに8回と順調にこなしていく事で運搬する麻薬の量も増え、やがては麻薬取締局の凄腕捜査官ベイツ(ブラッドリー・クーパー)がアールこと正体不明にして伝説の麻薬運搬人逮捕に動き出します。
そのベイツとモーテルのカフェで偶然一緒になったアールは、ベイツが自分を執拗に追う捜査官だと知りつつ、仕事に追われ妻との結婚式記念日を忘れた事を嘆くベイツに「家族を大切にしろ。じゃないと俺みたいになるぞ?」と優しく慰めるのでした。
そしてアールはラトンを殺害し麻薬組織を牛耳る新ボスからの新たな仕事の要請か、愛する妻か、このどちらかを選択せざるを得ない運命の日がとうとうやって来ます。
その時この心優しき90歳の麻薬運搬人が選んだ人生最後の選択とは!?
さらにそのアールの背後には“伝説の運び屋”逮捕に燃えるベイツ率いる麻薬取締局の追跡も直ぐそこまで迫っていたのだった!!

実在した87歳の麻薬運搬人の記事を元に、殆ど同じ年齢のイーストウッドが挑んだ主人公アール・ストーン。自分が老いた事を心の中では認めながらも、若造に舐められてたまるかい!と口で反撃し、黒人の家族が困っていると人種差別スレスレの軽口を叩きながらも手を差し伸べたりと、絶えず突っ張りながら生きてはいても、実は愛する家族との断絶を誰よりも悲しみ悔やんでいる孤独な90歳。私たちはそんなアールとイーストウッド本人をついつい重ね合わせながら、時にホロリとしたり、時にハラハラしながらスクリーンを見つめます。
映画が終盤に進むにつれ、私たちの心に温かく、そして染み透るような孤独な“運び屋”アールの佇まいと共に、その切なくも勇気ある決断を皆さんにもシッカリと見届けて頂きたいです。
最後に余談ですが、私は映画のラストで流れる「Don't Let the Old Man In」を聴きながら溢れ出て来る涙が止まりませんでした。
あの「グランドトリノ」(08)に続いて、またしてもクリント・イーストウッド監督の傑作が生まれました。この映画、ハッキリ言って龍熱のお薦めです(^_^)。
この「運び屋」は3月8日から全国ロードショー公開となりますので是非!!

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