さて、昨日は都内某所でデヴィッド・クローネンバーグの実息であるブランドン・クローネンバーグ監督作品『ポゼッサー』(20)を試写で観て来ました。
本作は第三者の脳に入り込み遠隔殺人システムを駆使する女工作員タシャ(アンドレア・ライズボロー)と、タシャに人格を乗っ取られた男コリン(クリストファー・アボット)のお互いの“人格争奪戦”とでも言うべき生死をかけた攻防を、父親譲りの突き放したようなクールな演出と、超過激なスプラッター描写の数々と共に描き切ったSFサスペンス映画。
私が観ていてシンドイなと感じたのが意識をタシャに乗っ取られ、暗殺任務に成功した人間はタシャの「(タシャが自分の意識を暗殺者から)脱出する」の言葉を最後にその場で自殺するように洗脳されている設定で、この辺りは観ている側に終始ギリギリの緊張感を強いるクローネンバーグ監督は見事だと思います。余談ながら、タシャ役のライズボローが普段から相当気味が悪い風貌(失礼!)なのも、この映画をより不気味に仕上げていたりするわけです。
中盤からはタシャの意識を宿しながらも必死に自己の人格を取り戻そうともがくコリンがタシャの唯一の“弱点”である人間の許を訪れる当りから異様かつ衝撃的なクライマックスへと突入していきます!このラストの展開は「そ、そこまでやるかい!」的な、まさに阿鼻叫喚の地獄絵図の一言です。
ただ逆にここまで救いようがない決着までやり切ったブランドン監督こそ、鬼才デヴィッド・クローネンバーグの“恐怖遺伝子”の継承者なのかも知れません。私はこのクライマックスの中途半端じゃないやり切り感は評価出来ると思いました。この『ポゼッサー』は3月4日からヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国順次公開との事です。