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Channel: 超級龍熱
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邱禮濤導演、黄秋生主演『イップ・マン最終章』をDVDで観て

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さてさて、先週でしたか、無事発売となった邱禮濤導演、黄秋生主演『イップ・マン最終章』(13)をDVDで観てみました。
以前に原語版のDVDを購入しているので字幕版は観る必要がないのでパスして、大好きな日本語吹き替え版で観てみました。声優陣の人選も良く中々楽しんで観る事が出来ました。
勿論、映画自体も晩年に差し掛かった葉問を実に渋く演じた黄秋生の寡黙な中にも強い意志を秘めた佇まいは素晴らしかったし、肝心のアンソニー葉問の詠春武打シーンも圧巻でしたね。
ただ、私としてはやはり映画の終盤に登場する“国際巨星”こと李小龍と葉問の師弟のやり取りにはどうしても違和感がありました。
師である葉問を飯店で外人の弟子たちと出迎えながら、既に師匠を待たずに料理を食い散らしているリーさん。嫌味ったらしくアメリカ製の煙草を葉問に薦めるリーさん。これまた嫌味ったらしく外車で葉問を送ると申し出るリーさん。そして極め付きは「師父、是非とも貴方の詠春拳の演武を撮影させて下さい。お礼にマンション一戸差し上げます!」と葉問に申し出るリーさん。結局のところ導演の邱禮濤は、これらの“ネガティヴな李小龍像”を見せる事で一体何を観客に訴えたかったんでしょうか?
確かに「マンション何々」のエピソードは私も聞いた事がある話ですし、この時期香港に帰国していたリーさんが外人の弟子、というか私設ボディガードとしてボブ・ベイカー(故人)を引き連れていたのも事実でしょう。
でも少なくとも私は弟子であるリーさんのこのような無礼な振る舞いに戸惑う葉問のシーンを見せられる事で、せっかくそれまで『イップ・マン最終章』の劇中で黄秋生が築いた素晴らしい葉問像に対する賞賛の思いがスッカリ興醒めしてしまいました。
邱禮濤自身が“リアルな人物描写”に拘る映画人ならそれはそれで良いと思いますが、私はこと“葉問系列作品”におけるベスト・エンディングを選べ!と言われたら、迷わずドニー兄貴主演『イップ・マン/葉問』(10)のラストで、ドニー葉問の許に李小龍少年が弟子入りを志願して来るあの素晴らしく感動的なエンディングを挙げます。
私がロードショー公開時に映画館で『イップ・マン/葉問』を観ていた時の事です。映画の最後にあのドニー葉問と李小龍少年の邂逅シーンがスクリーンに映し出された瞬間、私の前に座っていた観客の男性が思わず「そうか・・・そうだったのか!」と小声で叫んだんですね。
そう、この男性は葉問とリーさんの師弟関係といった予備知識を一切知らずに『イップ・マン/葉問』を観に来て、映画の最後の最後で“世紀の闘神”が“香港宗師”の弟子だった事実に興奮し、思わずそう叫んでしまったのでしょう。
私はこの微笑ましくも興味深いハプニングを通して、映画という娯楽が如何に人々に大きな感動と影響を与えるかを改めて痛感しましたし、この『イップ・マン/葉問』の素晴らしいエンディングがあったからこそ、今でも世界中のファンがドニー兄貴&葉偉信コンビに『葉問3』を熱烈に期待しているのだと思うのです。
私は『イップ・マン最終章』で葉問に扮した黄秋生を表現者として高く評価していますし、そのアンソニー葉問の風貌はまるであの黄飛鴻に最も良く似ていたと言われた実息の黄漢熙の面影さえ感じさせる事から、それこそアンソニー葉問には“元祖黄飛鴻武星”関徳興のように晩年の葉問を描いた“葉問系列作品”に今後も主演して欲しい!とさえ思っていました。
そういう意味でも今回の『イップ・マン最終章』で、リーさんこと李小龍を名も知らない俳優に演じさせたばかりか、あのような“ネガティヴな李小龍像”を映画の最後に付け加えた邱禮濤に対しては心から残念な気持ちです。

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